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”ジョコビッチ”の生涯グランドスラム達成の裏にあった約束。試合後にコートに書かれた「ハート」の意味とは???

2017/02/21 UPDATE
 
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「僕だって人間だ。

今まで手にしたことのない栄冠と勝利が近付いたとき、緊張や興奮……全ての感情に襲われた」

マリーに2ゲーム連取を許し、ゲームカウント5−4で迎えたサービスゲーム。

ジョコビッチはポイントを取るたびに、両手を掲げ、観客を煽った。

日頃は不敵に映るその姿が、この時ばかりは必死に見える。

彼は真に、ファンの力を欲していた。

最初に手にしたマッチポイントは、ダブルフォルトで逃した。

2度目も、自らのミスでふいにする。

なんとか手繰り寄せた3度目のマッチポイントは、長い長い打ち合いとなった。

バックのクロスのラリー交換から、マリーが先にストレートに切り返す。

今度はフォアの打ち合いから、またもマリーが先に仕掛けた。

そのたびにジョコビッチは、足を動かし、ボールを打つ直前に「フッ」と息を吐き出しながら、冷静に対応する。

「まるで自分の肉体から精神が離れ、2人の打ち合いを俯瞰(ふかん)して見ているような感覚だった。ボールを動かしながら、アンディのミスを誘おうと思っていた」

20本の激しい打ち合いの後、ジョコビッチの狙いは、現実となる。

乾いた音を立て、ネットをたたくマリーのショット――。

その瞬間、「肉体から離れた精神」が再び体に戻るまで、しばらく時間を要しただろうか。

ジョコビッチが3−1で初の全仏制覇を果たした。 


ジョコビッチは数歩軽く走った後、全身の力が抜けたように、大の字に倒れ込む。

アリーナを震わす大歓声を浴びながら数秒は微動だにしなかったが、思い出したように跳ね起きると、マリーと健闘を称え合った。

そうしてラケットを手に取り、再びコート中央に戻ってくると、

「何を始めるのだろう?」と好奇の目を向けるファンの前で、

赤土の上に
「大きなハート」
を描き始めたのだ。
 
 
※そのときの様子は下の動画の3:00以降。



その様子をクエルテンは、客席で拍手を送り見守っていた。

15年前の2001年――この赤土のコートに2度も大きなハートを描いたのは、クエルテンその人である。

1度目は、4回戦でマッチポイントをしのぎ、逆転勝利を手にしたとき。

2度目は、3度目の全仏オープン優勝を決めたとき。

クエルテンはコート上に巨大なハートを描くと、その中央に寝転んで、世界中のテニスファンの心をつかんだ。

当時14歳のジョコビッチ少年も、そんなクエルテンに、心を奪われた一人である。

「あれは僕にとっても、ローランギャロスの歴史の中で最も思い出深いシーンなんだ」。

今大会が開幕する前に、ジョコビッチはクエルテンにたずねた。

「だからお願いがあるんだ。もし僕が優勝したら、同じことをしてもいいかな?」と。

「もちろん」。

クエルテンは快く応じた。


そのときの約束を守るかのように、コート上に描かれるハートを見ながら、クエルテンは思ったという。

僕の方が、上手に描けていたんじゃないかな?

ノバクに言わないとね、もっと練習が必要だよって。

全仏で3回優勝するくらいの経験が必要なんだよ!


またも顔をくしゃっとさせると、クエルテンは声をあげて笑った。

少々いびつな巨大なハートは、全仏初優勝の初々しさをも赤土に刻み込む。

その中央に寝転ぶと、男子テニス史上8人目の“生涯グランドスラマー”は、重圧から解放された心を、ファンの祝福の拍手と大歓声で満たしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

圧倒的な強さを維持し続けるジョコビッチ。

そんな彼でも感じるプレッシャー。

それでも彼はこの難関を乗り越えました。

「ハート」という最強の武器を手に入れ、来年の今頃には

もっと綺麗な「ハート」のマークをコートに刻むかもしれませんね。



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