小さいころから、歌が大好きでした。
十八歳で歌手デビューしてから、なかなかヒットを出せなくても、歌を歌えるだけで毎日が幸せでした。
そして懸命に、誠実に力を尽くせば、きっといつか多くの方に私の歌声を届けられる……
そんな希望を抱いていました。
その希望を見失いかけたことがあります。
デビュー5年目、6枚目のアルバムを出したときのことでした。
そのアルバムは、なかなか成果を出せない私にとって、「正念場」の1枚でした。
今度こそ多くの方に聞いてもらえるよう、渾身の力で臨まなくてはいけない。
そう考えて、全曲作詞にも挑戦。
自分の中にあるすべてを注ぎ込んだ一作でした。
しかしその作品は、思ったような結果を出すことが出来ずに終わったのです。
さすがの私も、暗い気持ちになりました。
それまでは、どのような結果でも、「次がある」と思えたのですが、この時ばかりは無理でした。
すべてを出し切ったのにダメだったのなら、次は何をすればいいのか……。
完全に、道を見失っていました。
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